書評 book review 「DNA」 2007 2 10

書名 やさしいバイオテクノロジー
著者 芦田 嘉之
出版社 ソフトバンク クリエイティブ

 ソフトバンク系の出版社が、このような本を出版するのは、
意外性があります。
パソコン関係の出版だけかと思っていました。
 バイオテクノロジーの一般向けの書籍は、数多くありますが、
この本の「売り」は、DNAの塩基配列が掲載されていることです。
 おそらく、一般向けの書籍で、
塩基配列が、これほど詳しく掲載されている本はないでしょう。
(これが、この本を買った理由です)。
 たとえば、お酒が弱い人の遺伝子は、どうなっているか。
(注意 前後の塩基は省略します)
acactgaagt(これが正常というか、お酒が強い人の塩基配列)。
acactaaagt(これが、お酒に弱い人の塩基配列)。
 たった一文字の違い(一塩基の違い)です。
「g」であるべきところが、「a」になっています。
 延々と続く塩基配列のなかの、たった一文字置換で、
アミノ酸E(分解型)は、アミノ酸K(不分解型)に置換され、
アルデヒド脱水素酵素活性は、劇的に破壊され、
アルデヒドを分解できなくなります。
(つまり、お酒が弱くなるということです)。
 これが、お酒の話ならば、「酒のつまみ」になります。
お酒の強さには、個人差があるという話題になるでしょう。
 しかしながら、これが、薬の個人差となると、
笑い話では済まされません。非常に深刻な問題です。
 ある人には、薬がよく効き、副作用もない。
しかし、ある人には、薬がよく効かず、副作用が大きい。
「同じ薬なのに」と、医者も患者も思うでしょう。
 よく言われるのが、ヒトゲノムの個人差は、0.1%強だけ。
たったの0.1%、されど0.1%。
この0.1%が、途方もなく大きい。
 今のような「大は小を兼ねる」というような発想の薬(旧い薬)から、
近い将来、
個人差に合わせたオーダーメイドの薬(新薬)が開発されることを祈ります。
 いくら薬が効いたとしても、薬の副作用で、
患者のQOL(quality of life)が低下しては意味がないと思います。



















































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